オーガニックティーへのこだわり

大井川の流れに沿って山道を辿ると、ふいに山深い村の茶畑に出合いました。
標高600メートル。
夜明けには大井川の川面から立ち上る朝霧が茶畑を包み、あたり一面を幻想的な風景にします。
静岡県川根町は、江戸時代にはすでに茶どころとして知られ、川根茶といえば今も昔も、良質なお茶の代名詞です。
その川根のさらに奥、天空の里ともいわれる場所にあるこの畑は、高地ゆえに虫を寄せ付けず、無農薬でお茶を育てることができるのです。
山あいにあるため、農薬を使う他の茶畑の影響を受けることもありません。
昼夜で寒暖の差が大きく、水はけの良い土壌のため、茶葉がじっくりとうまみを蓄えながら育ちます。また、立ちこめる霧も良質なお茶の栽培には欠かせません。
美味しく、しかも安心していただけるお茶が、この天空の畑で生まれます。

天空の里では無農薬栽培に加え、もう一つ特徴的なお茶の育て方があります。秋冬期に、周辺にある立ち枯れたススキを刈り、茶畑に敷き込む「茶草場農法」です。川根をはじめ、掛川などの静岡県のごく一部に残る農法ですが、枯草を敷き詰めることで地温を調整し、土の中の水分を保持したり、枯草の中の有機物を土に供給するなど、自然と共存する畑をつくっています。草を定期的に刈る適度な手入れにより、絶滅危惧種とされる希少な動植物が命をつなぎ、生物多様性も保たれてきました。

静岡県の茶草場農法は、特定の地域に伝統的に行われてきた農業であるとして、2013年には世界農業遺産に認定されました。
天空の里では、茶草場農法のほか、さらに有機肥料によるお茶栽培を試みています。畑の主は大橋哲雄さん。江戸時代からご先祖が耕してきた茶畑を守ります。伝統的な農法を守るかたわら、最新の技術も率先して取り入れようと、土壌診断の技術師、山下 雄さんといっしょに、有機肥料を使った安全で健康な土壌づくりに取り組んでいます。土に養分をじっくり吸収させることから始めるお茶栽培には、試行錯誤の時間が続きます。それでも、自然と向き合い、環境への負荷を極力減らしての美味しいお茶づくりには、お茶の未来が見えてくるようです。

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